10月3日(土)
一般発表
14:05−14:45
〈オンライン1〉音楽と音

マックス・ニューハウスは何を「⾳楽」と呼んだのか

小寺 未知留(立命館大学)

「サウンド・アート」と呼ばれる芸術作品・芸術活動は、⾳という共通点を⾳楽との間に有しているが、⾳楽とは異なる芸術分野として理解されることが多い。歴史的には、ジョン・ケージの実験⾳楽を経て、1960年代から70年代初めに第⼀世代の作家が登場し、その後、80年代以降に呼称として「サウンド・アート」という語が⽤いられるようになり、2000年代に⼤規模な展覧会が複数開催されたことによってひとつの領域としてその存在感を強めた。

本発表の⽬的は、サウンド・アートの第⼀世代の作家とされ、サウンド・インスタレーションの先駆者と考えられているマックス・ニューハウス Max Neuhaus(1939‒2009)の創作・⽂筆活動をたどり、彼がどのような場⾯で「⾳楽」という語を⽤い、⾃作品をいかに「⾳楽」から差別化したのか、その変遷を明らかにすることである。⾔い換えれば、本発表は、今⽇ではサウンド・アートと呼ばれる、⾳を⽤いながらも⾳楽ではない芸術分野の形成過程に関する重要な事例研究を提供するものである。

ディア芸術財団 Dia Art Foundation が刊⾏した論集(2009)やチャールズ・エプリーCharles A. Eppley の博⼠論⽂(2017)、クリストフ・コックス Christoph Cox の『ソニック・フルックス Sonic Flux』(2018)など、ニューハウスに関する先⾏研究は少なくなく、本発表で着⽬する個々の作品や著作についてもしばしば議論がなされてきた。しかしながら、彼が何を「⾳楽」と呼んでいたのかという観点から創作活動を⼀望したものは⾒当たらず、通時的な検討は未だ⼗分になされていないと考えられる。

本発表で検討対象となるニューハウスの作品と著作は、主に、1967年に発表された初のサウンド・インスタレーション作品とされる《ドライヴ=イン・ミュージック Drive-In Music》、1974年に出版された⼩冊⼦『プログラム・ノート Program Note』、ニューヨークに現在でも設置されている《タイムズ・スクウェア  Times Square》(1977‒1992,  2002‒)、 1982年に東京の⻄武美術館で開催された講演の記録である。これらを検討すると、1960年代後半の時点では⾃作品のタイトルに「⾳楽」という語を⽤いていたニューハウスが、70年代中頃には時間と空間を対⽐するかたちで⾃作品を旧来的な⾳楽と差別化し始めながらも、それと同時に、⾃作品について説明する際に「⾳楽」という語をなおも⽤い続けていたことが指摘できる。80年代に⼊ると、時間と空間の対⽐は先鋭化され、作品は「⾳楽」ではなく「サウンド・ワーク」という語で呼ばれるようになる。つまり、ニューハウスの場合、⾳を⽤いる⾃⾝の創作活動を明確に「⾳楽」ではないものとして語るための語彙や論理は、創作実践を後追いするかたちで、70年代以降に徐々に構築・更新されていったことが明らかになる。

発表では、先⾏研究の指摘や論点を逐⼀確認するのはもちろんのこと、ニューハウスと同時代的の批評や評論にも可能な限り⽬を配る。

発表資料PDF:「マックス・ニューハウスは何を「⾳楽」と呼んだのか:小寺 未知留(立命館大学)」

10.03
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