10月4日(日)
若⼿研究者フォーラム
12:45−13:15
〈オンライン1〉映像・演劇

ジョン・ゾーンの作⾵形成におけるアメリカ前衛演劇の影響
―ゾーン/フォアマンによるオペラ《Astronome》を例に―

後藤 孝典(関⻄学院⼤学)
※発表は中止となりました

アメリカの⾳楽家ジョン・ゾーン(John Zorn, 1953-)は、1970年代から⽣地ニューヨークのロウアー・イースト・サイドを拠点に活動を開始した。サクソフォン奏者、インプロヴァイザー、映画⾳楽、現代⾳楽の作曲家、クレズマーバンドなど、その活動は多岐にわたる。ロウアー・イースト・サイドでは、1970-80年代にかけて「分裂症的折衷主義(Schizo- Eclecticism)」的性格を共有した若い⾳楽家が同時多発的に出現したが(Stone; 1996)、質・量ともにゾーンは中⼼的存在といえるだろう。

ゾーンはその作⾵の影響源として無数の作曲家の名前を挙げてきたが(Zorn; 1993)、そのことは活動の広範さとともに、彼の実態の捉え難さの⼀因となっている。彼について、代表作である《コブラ》(1984)をはじめとする80年代の⼀連のゲーム形式の即興演奏や、ファイル・カード・コンポジションと呼ばれる⼿法が⽣み出すコラージュ構造から、しばしば「ポストモダン的」と評されてきた。その⼀⽅、活動初期には Theatre of Musical Optics と呼ぶパフォーマンスを⼿掛けるなど、ゾーンは常に⾳楽以外の表現形式への関⼼を⽰してきたが、これまで同時代の演劇と関連づけた評価は少なかった。

そこで本発表では、ゾーンと演劇との関わりの⼀例として、同じくニューヨークを拠点とし、アメリカ前衛演劇を代表する存在である劇作家リチャード・フォアマン(Richard Foreman,    1937-)と、ゾーンが共作したオペラ《Astronome》(2009)を取り上げる。ゾーンはキャリア初期からフォアマンと私的な交流を続けているが、現時点では本作が唯⼀の共同制作である。

フォアマンの主宰する劇団オントロジカル・ヒステリック・シアターで上演された本作は、1920-30年代に劇作家アントナン・アルトー(Antonin Artaud, 1986-1948)と作曲家エドガー・ヴァレーズ(Edgard Varése, 1883-1965)が構想するも未完に終わった⾳楽劇《ひとりぼっち/天⽂学者》を着想源としたゾーンの同名の⾳楽作品を舞台化したものである。本作のもととなったゾーンの⾳楽作品は、彼が「聴く映画(Aural Cinema)」と呼ぶ作品の系譜 にあり、作曲者による架空の台本も存在する。本発表では、それぞれの証⾔や本作の映像を参照しつつ、ゾーンの構想とフォアマンによるリアライゼーションを⽐較検討することで、ニューヨークで活動する両者の美学の共通項、あるいは差異を提⽰する。

また、ゾーンは最初期のミュジック・コンクレート《メキシコの征服》(1973)で作品名を引⽤して以来、⼀貫してアルトーの演劇への強い共感を⽰してきた。この事実をふまえ、ゾーンが「アルカナと残酷劇の出会い」(Zorn; 2006)と表現するヴァレーズ/アルトーの⾳楽劇の製作プロセスの検証から、両者の⽬指した理想像を明らかにし、近年のゾーンのオカルティズムへの傾倒について、その源流の⼀つとしての位置づけを試みる。

 

発表資料PDF:「ジョン・ゾーンの作⾵形成におけるアメリカ前衛演劇の影響
―ゾーン/フォアマンによるオペラ《Astronome》を例に―:後藤 孝典(関⻄学院⼤学)
※発表は中止となりました

10.04
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