10月3日(土)
若⼿研究者フォーラム
17:00−17:30
〈オンライン2〉美学2

想像的抵抗の問題について―物語参与の観点から―

岡田 進之介(東京大学)

私たちは小説などのフィクション物語作品を鑑賞する際、作品における「ロバが言葉を話す」というような一種荒唐無稽な事柄を、抵抗なく想像することが出来る。その一方で私たちは、「女児であれば嬰児殺しは善である」というような倫理的に逸脱した事柄に対しては、想像するのに相対的な困難を感じることがある。現実から逸脱した言明の内で も、ある種の言明は想像的参与における抵抗を引き起こし、それ以外の言明が抵抗を引き起こさないのは、何故なのだろうか。この問題は分析美学において「想像的抵抗imaginative resistance」(以下IR)の問題として議論が積み重ねられてきた。

本発表ではそのようなIRの問題について、三つの異なる主張を順に検討し、それぞれの有効性と限界を明らかにする。その上で発表者は、IRを作者による反応の指定に対する抵抗に同定する、G. Currieの議論を擁護する。

議論は以下のように進める。まず現代においてIRの問題を提起した、初期の論者(Walton 1994, 2006; Gendler 2006; etc.)の議論を検討し、不可能説や欲求説など、IRの現象の基本的な定式化を確認する。また後に「第一波」と称されるこれらの議論が、問題となる命題のいかなる性質が、抵抗を引き起こすのかを説明しようとするものであったことを示し、しかしその試みが「ある作品では抵抗を引き起こす命題が、他の作品では引き起こさないことがある」という現象を説明できないという欠点を抱えていたことを明らかにする。

次にそれら第一波の議論を批判し、脱文脈化した命題だけでなく、そのコンテクストを考慮する必要を唱えた近年の「第二波」と呼ばれる研究を検討する。Nanay (2010), Liao (2016), Clavel-Vazquez (2018)らの第二波の代表的な議論が、現象の文脈依存性を「ジャンル」によって説明しようとしたことを示す。その上で発表者は、ジャンルの考慮がIRの現象の説明に必要であることを認めつつも、それでは説明できない事例を提示すること で、ジャンルが現象の原因の一つの要素でしかないことを明らかにする。

最後に発表者は、上記の第二波の不十分な点を補うIRの理論の提示を試みる。そのために Currie (2010)を参照し、IRの議論における、物語の「フレーム効果」の有用性を論じる。つまり IRを、ある種の虚構的言明に対する想像の抵抗というよりも、作者の提示する物語参与の枠組みへの抵抗として捉え直す。これによりIRとして論じられてきた現象を説明する、より包括的な理論を提示することが出来るだろう。

本発表は、想像的抵抗の問題という、分析美学のフィクション論において議論されてきた問題に、より説得的な解決法を与えるというミクロな意義を持つ。しかしそれと同時 に、分析美学におけるフィクションと想像力の問題系に、「物語」という新たな分析の切り口を提示するという、マクロな意義を持つものである。

発表資料PDF:「想像的抵抗の問題について―物語参与の観点から―:岡田 進之介(東京大学)」

10.03
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